井の中の蛙

日々の生活の中で感じたことを綴りたいと思います。

ASKA事件2

もうかれこれ20年以上も前になる。当時中学生だった私は不登校であった。どうしても学校という共同生活には馴染めず、周囲の人間と自分は全くの別物であり自分は特殊であり特別なのだと言い聞かせていた気がする。いわゆる、中二病と呼ばれる状態だったのだと思う。

気まぐれで登校したある日の事である。たまたま通りかかった体育館から聴いた風な流行りの音楽が流れてきた。『今からそいつをこれからそいつを殴りに行こうか』言わずと知れた『YHA YHA YHA』であった。誰かが遊びで流したのか、何かのイベントをやっているのかは分からない。

「フンッ・・・」

その光景を鼻で笑い、両手をポッケに突っ込み早々と帰宅したのを覚えている。

聴いた風な流行りの音楽はどうも自分の肌には合わない。やっぱ音楽といえばこれでしょ。親のポータブルCDプレイヤーにお気に入りのアルバムを入れて聴いていた音楽。それはチャゲ&飛鳥の『SUPER BEST』であった。

そう。YHA YHA YHAの歌手と、ひとり咲きの歌手は別人だと思っていたのだ。

当時中学生であった自分にとって、ひとり咲きは格別であった。特に曲の最後の『ひとり~ぁざぁきぃ~』の部分に何とも言えない快感を覚え、思わず右手に握りコブシを作ってしまうほどであった。

皮肉にもその右手の握りコブシは数年後、聴いた風な流行りの歌『YHA YHA YHA』にて天高く突き上げることとなったのだ。

その後、リリースされるチャゲアスの楽曲には次々と魅了されることとなる。

やはり私の中ではNOT AT ALLが大きな影響を与えた名曲であり、この単語に含まれる『こんなもんじゃないぜ』『それでいいじゃないか』という対照的な二つの意味に一つの真理を垣間見てしまったほどである。

私は20代前半(NOT AT ALL)まではチャゲアス依存症だったのだと思う。チャゲアスが全てであり、チャゲアス無しに自分の人生は語れないとさえ思っていた。しかし、一つの失恋をきっかけに急速にチャゲアスから距離を置くこととなった。

当時付き合っていた彼女もまた一緒にチャゲアスに夢中になってくれた。ライブではもちろん一緒に右手の握りコブシを天高く突き上げてくれた。大好きな彼女に大好きなチャゲアス。この二つの理想に挟まれ幸せの絶頂に達していた時期があったが、不意に訪れる現実という壁にぶち当たり、あえなくロウソクの炎を吹き消す様な終わりを迎える。

辛いとき、悲しいとき。いつも傍にあったのはチャゲアスの音楽であった。

しかし、彼女とチャゲアスがリンクしている以上はチャゲアスは聴くことはできない。チャゲアスを失った自分はチェーンの外れている自転車を一生懸命漕いでいる生き方をしていた様な気がする。懸命に体を動かしても前に進まないのだ。無駄に体力だけを消耗しチェーンの外れた自転車を乗り捨てる。そして訪れる無気力と脱力感。

うつ病・・・この3文字が頭をよぎった。まずい。。。

うつ病かどうかは定かではないが心の病の予兆を感じ取れたのは不幸中の幸いであった。正しい治療法では無いかもしれないが、必死に感情に刺激を与える努力をした。レンタルビデオ屋に向かい片っ端からお笑いのビデオと泣けそうな映画を借りまくる。

とにかく喜怒哀楽を感じることが心のリハビリになるのではないだろうかと考えたのだ。そして新しいことにチャレンジする。ぶらりと立ち寄ったゲームショップ。目に付いたのは囲碁のソフトだった。ルールも全く分からない未知の頭脳ゲームに没頭してみよう。途中本屋に立ち寄り囲碁の入門書も購入した。

一連の行動が功を奏したのか、無事、失恋とチャゲアス依存症の後遺症から立ち直ることができたのだった。

日本人は世界的に見ても特殊な人種で、無宗教のひとが大多数を占める。しかし信じるものが無いという訳ではないのだ。人によっては道徳であったり人によっては過去の経験であったり、もちろん仏教等の特定の宗教だったりもする。そして私の場合はチャゲアスの音楽であったと思う。

これは私の持論だが、信じるもの(宗教、道徳、チャゲアスの音楽等)は心の支えにしてはいけないと思う。

このようなことを言うと多くのチャゲアスファンは眉をひそめてしまうかもしれませんね。しかし、私の経験上、心の支えがある以上は自立をしていないという事に他ならないのです。一連のASKAさんの薬物事件。以前の私であれば相当堪えていたでしょう。

今の私にとってのチャゲアスASKAさんの音楽は心の支えではなく心の栄養です。支えられるのではなく学びとるものです。ASKAさんから紡ぎだされる歌詞(言霊)にはつくづく考えさせられる。先日、発表された楽曲『FUKUOKA』も素晴らしく、独特な情景描写に思わず溜息をこぼしてしまったほどだ。

しかし、一連の薬物報道に関して私はASKAさんを完全に信じることはできない。アンナカや睡眠薬など合法薬物であっても常用していれば薬物依存です。「覚せい剤なんかやっていない、見ていない」の言葉の裏には違法薬物でなければ問題ない・・・と読み取ってしまう自分はひねくれているのかもしれませんね。

しかし、ASKAさんがこれまで残した功績や今も根強い人気を背負うとなると自立するには計り知れないメンタルが必要とするだろう。薬物に頼ってしまっても仕方ないとも思えてしまう。それだけに世間もマスコミも無責任にASKAさんの人権と名誉に傷付けることに怒りを覚えるのはファンとしては当然だといえる。

チャゲアスファンである私に今出来ることは薬物報道からは距離を置き、ミュージシャンとしてのASKAさんを信じて見守る事だけです。今後発表される楽曲とASKAさんのパフォーマンスに期待したいと思う。

そしていつかまた、聴いた風な流行りの歌『YHA YHA YHA』にて右手のコブシを天高く突き上げる。そんな日が来る事を強く願っています。